
体外受精と先天異常
自然の妊娠では、出生児の3%に先天奇形が認められます。
また妊娠の15%が流産に終わり、その大部分が胎児の異常
(卵子あるいは精子の異常、
受精や分割発育していく過程で生じた異常など)
によるもので、流産率は母体の加齢とともに高くなります。
現在までに世界中で沢山の子供が体外受精により妊娠し、出生しています。
その子供の全てが正常ではありませんが、先天異常をもって産まれた子供の頻度は自然の妊娠と同程度です。
従って現時点では、体外受精・胚移植という行為が先天異常の原因になることはないという事実は広く認められています。
受精卵・胚の凍結保存も同様です。
しかし、顕微授精は臨床応用されてからまだ日が浅く、評価するためには出生児の数が十分ではありません。
現状では先天異常の頻度は増加しないと考えられていますが、増加の危険性を指摘している報告もあり、
今後に残された問題といえます。
また、顕微授精を受ける人は染色体異常の頻度が高いともいわれており、ご夫婦の染色体の検査を
勧めているものもありますが、この点についてもまだ十分なコンセンサスは得られていません。
ただ一つ顕微授精に関連して明らかになっていることがあります。
最近、精子を造る遺伝子が解析され、男性不妊の中にその遺伝子の欠損している人がいることが分かってきました。
もし造精機能障害 (精子を造る機能の障害)
がそのような遺伝子の異常によるものであり、
自然では妊娠できないために顕微授精を行って妊娠したなら、生まれてくる子供が女児の場合には問題はありませんが、
男児ではほぼ100%にその造精機能障害が伝搬され、その子も男性不妊となると考えられます。
この遺伝子の異常の問題は医療の大きなジレンマです。
最近、多くの疾患が遺伝子の異常によるものであることが分かってきました。
現在の医学ではその遺伝子の異常を治すことはできませんが、病気をもった人でも治療により元気に生きていくことができます。
しかしその治療は、とりもなおさず病気の遺伝子を次の世代に伝えるという側面を持っているとも言えます。